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みやげのみやげバナシ 《vol.2 名古屋編》

ESSAY

みやげのみやげバナシ 《vol.2 名古屋編》

Editer:dōzo編集部

旅行のたのしさのひとつ、お土産選び。

大好きな人のことを考えてキョロキョロ一所懸命さがすのも、「あ、これ、あの人にあげたら喜んでくれるかな~」ってふと思いついてニヤニヤしちゃうのも。
どちらもその旅ならでは、自分ならではの贈り物。

そんな“土産の話”を旅の思い出とともに綴っていくコラム連載「みやげのみやげバナシ」。
dōzoライターPEさん、今回ははじめての名古屋へ。

・・・・・・・

お笑いが得意なのが大阪だとすれば、名古屋はお茶目が得意な街だと思う。

「ここ、あたためちゃったけど、どうぞ。」

と言いながら、電車でわたしたち二人が隣同士で座れるように、マダムが席を移動してくれた。

名古屋のシンボル「ミライタワー」の横では、ちょっと小洒落た卓球場で仕事帰りのサラリーマンたちが大盛り上がりで卓球をたのしんでいるし、串カツ屋の店主は、強面とは裏腹な優しい笑顔で「いらっしゃいませっ!」と微笑んでくれる。

いい意味で、“裏切られた!”と、思った。

東京より身近で、大阪のように愛嬌たっぷりな名古屋は、思ったより心地いいじゃないか。

はじめての名古屋へ


人がワサっといるような場所が苦手なわたしは、旅先はなんとなく都会を避けてしまうようなところがある。

遠くに住む彼が、出張で名古屋まで来ているというので、近くだから行くよとふらっと名古屋まで出向くことになった。20年以上関西に住んでいるのに、お隣さんとも言える名古屋で下車するのは初めてだ。たったの1時間で新幹線を降りてしまうのは、なんだかもう少し乗っていたいような気がしてそわそわする。

あっという間の旅路に気持ちがついていかないまま、名古屋駅で彼と合流。
到着早々、コメダ珈琲でモーニングを。旅先で出会うチェーン店はどうしてこんなに落ち着くのだろう。
とはいえ、近所のものとはまた違う、広く開放感のある店内に「さすが本場ですね。」と心の声が漏れる。
喫茶文化が染み付く名古屋は、コンビニと同じぐらい喫茶店があるように思う。コメダ珈琲発祥の地とはいえ、そのバリエーションと店舗数の多さには驚いた(和食版があったり、オールドコメダがあったり)。

お昼は、地元のサラリーマンたちに混じってあんかけスパゲッティをずるっと食べ、食後は喫茶ボンボンの赤いソファに腰掛けて、コーヒーを一杯。

ボンボンの洋菓子店で、せっかくだからと洋菓子を買って帰ることにした。

店の奥で慣れた手つきで結ばれるリボンは、鮮やかなショッキングピンクだ。
思わず、“名古屋っぽくていい!”と、口元が緩む。
派手好きが多いといわれる名古屋を象徴したようなそのリボンは、派手だけどふわっと柔らかくて、なんだかお茶目だ。
歩く度に、紙袋の中でふわっと揺れるリボンが隙間から見えて、またニヤリとする。

歩き疲れてヘトヘトになった身体を引きずりながらも、名古屋の懐に少しは入れたんじゃないかと、心はずっと上機嫌だった。
それはきっと、旅中に出会ったお茶目な名古屋人たちが、知らず知らずのうちに「いりゃあせ(ようこそ)、名古屋へ!」と、わたしを招いてくれたからに違いない。

名古屋のテーマパーク、「矢場とん」へ


夕食の一軒目を串カツ屋で済ませた。時刻はまだ20時前。
名古屋ナイトはこれからー!なんて言いながら歩いていると、力士姿のブタがどでーんと立っている。

味噌カツと言えば、名古屋。名古屋といえば味噌カツだ。
そんな名古屋で、味噌カツといえば「矢場とん」らしい。

串かつで少しもたれた胃に、これから味噌カツを入れるとなると躊躇ったが、食べてみたい気持ちと、力士姿のブタの圧にまんまと負けて、気付けば他の観光客に混じって外まで続く列に並んでいた。

それはそうと、このブタワールドはなんなんだ。
繁華街に突如として現れるブタの世界は、かわいくもあり、奇妙でもある。

数十分待ってやっと店内に入れたが、店内では力士姿のブタがあらゆる場所に描かれてる。
壁や暖簾、椅子や店員さんのTシャツまで、ぶーちゃんと呼ばれる愛嬌たっぷりのブタで店中が彩られている。
モニターで永遠と映されるぶーちゃんのアニメがますますその世界観を盛り上げ、奇妙な世界にどんどん引き込まれる。細部にまでこだわる徹底されたエンターテイメント力にすっかり感動してしまった。

知っているこの感覚は、テーマパークの入り口で”ギギギ”とバーを下げて入場する時の高揚感だ。
あの瞬間とほとんど同じ感覚を、「矢場とん」で味わった。

隣の小さなグッズショップには、魅力的なぶーちゃんグッズが敷き詰められている。
思わず閉店間際に駆け込み、一目惚れしたマスコットを握り締めてレジへ向かう。

「顔がちょっと違ったりするから、ゆっくり好きな子を見つけてくださいね。」
と店員さんが声をかけてくれた。

テーマパークでしか聞いたことのない優しい気遣いに、びっくりして目を見開いたが、ちゃっかりお言葉に甘えて隣にいたブーちゃんと取り替えることにした。

ここは、テーマパークなんだ。

誰かにとっては、ただ味噌カツを食べる場所でしかないのかもしれないが、わたしにとっては夢の国だ。
テーマパークと聞いてここを思い浮かべる人が世界中でわたしだけだとしても、胃もたれしちゃうよーなんてふざけて笑いながら、ここのゲストでいたいと願う。

言うまでもないが、本場の味噌カツの美味しさは想像以上で、胃もたれなど忘れてペロリと食べてしまうほどだった。

名古屋のお土産


ボンボンの箱入り洋菓子

一緒に住む家族へのお土産に。
どこか懐かしい素朴なバームクーヘンとマドレーヌのセット。
なんと言ってもラッピングがかわいい。開けても楽しい喫茶店のお菓子は、食べ応えたっぷりで、食いしん坊の家族と一緒に嬉々としてむしゃむしゃ食べた。喫茶文化が色濃く残る名古屋にふさわしい華やかなみやげ。ぱくっと頬張れば、名古屋で出会ったステキな人々を思い出す。

矢場とんのマスコット

遠くで暮らす保育園に行きはじめたばかりの甥っ子へ。
テーマパークに行ったことない甥っ子にとっても、「矢場とん」は夢の国になるかもしれない。
そんな少しの願いを込めて、もう少し大きくなったら甥っ子にあげようとタグを切らずに置いている。
某巨大テーマパークが大好きな姉に怒られちゃうかもしれないが、遠くにいる叔母さんができることなんて「矢場とん」のようなお茶目な子に育ってね、と願うくらいだ。

大きくなったら、一緒に味噌カツ食べようね。それまでリュックにぶーちゃんをぶらさげて、すくすく育つんだよ。ぶーちゃんよ、どうかかわいい甥っ子を見守ってくれ。

ON READINGでみつけたLOVER'S NAGOYAと、Tシャツ

お待ちかねの、自分へのご褒美に。
旅先では、必ずと言って良いほど本屋に行く。ローカルなものが多い本屋は特に大好きだ。迷わず手に取った「LOVER'S NAGOYA」は、名古屋という街がだいすきな人々の手によって作られた良本。吟味した結果Vol.2を持ち帰ったが、名古屋に行く度にちびちび集めるのも面白そう。
Tシャツはかなり迷ってこちらのカラーを購入。もうすでに何度も着用している愛用品になっている。本屋にある洒落たTシャツには、昔っから目がないのよ。

初めての名古屋は、あまりにも定番すぎて笑ってしまうほどの旅だったが、初めて行く地では定番を回るのが礼儀だと思っている。
都会が苦手なわたしが、こんなにも心地よく過ごせたのは、どこでもコーヒーブレイクができるという安心感と、名古屋人のお茶目で愉快な人柄があったからに違いない。

帰宅後、ONREADINGでいただいたフリーペーパーに記載されたQRコードを開くと、ぎっしりとおすすめスポットが載っている。
おいおい、またすぐに名古屋へ行きたくなるじゃないか。今度はなかなかディープな名古屋を知れそうだ、と胸が高まる。

こうして次のたのしみをくれるのも、お茶目な名古屋らしくて良い。

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