MOMENTS IN LIFE ─ れのすかさんが描く、“暮らしの中のささやかな瞬間”《今月のひと展》
こんにちは!dōzo編集部のカワツです☺
これまでdōzo mag.ではたくさんのイラストレーターさんの展示をまとめて紹介してきましたが、今回から少しだけリニューアル。
各地の展示を紹介しながらも、その中のひとりの作家さんにぐっとフォーカスしてお話を伺う新企画、「今月のひと展(ひとてん)」がスタートします。
その第1回を飾ってくれるのは、「#81 きみに服だけは贈れない。」を描いてくださったイラストレーターのれのすかさん。GALLERY IRO(吉祥寺)で初の個展『MOMENTS IN LIFE』を、11月3日(月・祝)まで開催中です。
「暮らしの中のささやかな瞬間」をテーマにした展示は、れのすかさんらしいやわらかいトーンと、ふと心に残る“日常のひとコマ”が並んでいます。
“瞬間”を描くということ
—— 初めての個展開催、おめでとうございます!今のお気持ちはいかがですか?
ありがとうございます。準備が大変だったので、ようやくここまで来たなという安堵の気持ちです(笑)。これまでグループ展にはいくつか参加してきて、「そろそろ自分ひとりでもできるかも」と思い始めた頃に、以前お世話になったギャラリーの方からお声がけをいただいて。気心の知れた方だったので、「お願いします!」って即決でした。

でも、いざ始めてみると想像以上に大変で(笑)。ひとりで空間を埋めるって、こんなに難しいんだ!と痛感しました。最初は「まず作品数をそろえなきゃ」という気持ちが強かったです。でも準備を進めていくうちに、ひとつひとつの作品が空間の中でどう呼応するかを考える時間がとても楽しくなっていきました。
——『MOMENTS IN LIFE』というタイトルには、どんな思いを込めましたか?
「LIFE」だけにしようと思っていたんです。でも「ライフ」だと“人生”という大きな意味にもなってしまって、少しスケールが広いかなと感じて。私が描きたいのは、もっと日常の中の“瞬間”なので、「MOMENTS」を加えて『MOMENTS IN LIFE』にしました。
実は最初、「観察」というタイトルも考えていたんです。でも理科の実験みたいで少し硬い印象になりそうだったので(笑)、最終的に“暮らしの中の温かさ”が伝わる言葉に落ち着きました。

日常の記憶を作品に
——今回の展示テーマ「暮らしの中のささやかな瞬間」は、どんなところから着想されたのでしょうか?
特別なことを描こうというよりは、普段の生活の中で“あ、この形かわいいな”と記憶に残ったものを描いています。蜂蜜の瓶、イス、帽子、朝食のシーンなど、どれも自分の家や実家で見た風景の記憶がベースになっているんです。
——出展作品の中で、特に思い入れのある作品を教えてください。
「蜂蜜」の絵ですね。母がすごくストック好きで、家に蜂蜜が10個くらいあったんです(笑)。それを見て描こうと思ったんですけど、最初はジャムと一緒に描いてみたけどしっくりこなくて、一度ボツにした作品なんです。でも今回の個展に向けて改めて描いてみたら、ようやく納得のいく形になって。母の姿や当時の記憶が重なって、思い入れの深い一枚になりました。
左から1番目が蜂蜜の瓶を描いた作品『Is it full?』
あと「シャンプーとトリートメント」の作品もお気に入りです。ふたつのボトルが並ぶ様子を見ていたら、なんとなく人に見えてきて。寄り添うふたりのような雰囲気を感じて、少し擬人化するような気持ちで描きました。
なんだか物語を感じる作品『My position』
——グッズ制作にも力を入れたとのことですが、アイテムについて教えてください。
今回、初めてアクリルキーホルダーを作りました!流行りもあって、ずっとやってみたかったんです。犬やくま、うさぎを描いてほしいというリクエストに応える形でラインナップしました。最初は大きいサイズを考えてたんですけど、ママ友から「小さい方が可愛いよ!」と言われて小さくしたんです(笑)。そのおかげで、ポーチやカバンにつけやすく、日常にさりげなく馴染む感じが気に入っています。
3㎝のミニサイズで日常に溶け込むアクリルキーホルダー
記憶と暮らしの間で
——今回のテーマのように「暮らし」や「日常」を描くようになったきっかけって何だったのでしょう?
うーん、いつの間にか…ですね(笑)。自分の家や実家の風景が自然とモチーフになっていって。目にしたものの中から形がいいなと感じる瞬間を大事にしています。
——暮らしを大切にされているれのすかさんですが、普段から写真を撮って記録したりしますか?
昔はもう少し鮮やかな色を使っていたんですが、最近は「部屋にあってもなじむ色」を意識しています。絵の具も混色して、やわらかいトーンを作るようになりました。家に植物が多いこともあって昔から緑色が好きなんですけど、あまり偏りすぎないようにバランスに気をつけてます。
ご自宅から個展会場に持ってきたという植物
あと最近は、“丁寧に描かなきゃ”って力が入っていた頃よりも、少し抜け感を持って描けるようになりました。多少歪んでいても、そのほうが味があるし、線の揺れの中に自分らしさが出る気がして。展示を準備しながら、描くことそのものの楽しさを、もう一度感じられた気がします。
個展を通して感じたこと
——初めての個展準備で大変だったこと、印象に残ったことはありますか?
やっぱり全体のバランスを考える経験がすごく新鮮でした。家の床にいっぱいに作品を並べてみて、色や構図のバランスを見ながら“私はこれが好きなんだな”と気づく時間があって。改めて、自分の中にある好きなかたちを再発見できた気がします。
——実際にお客さんと直接お話ししてみて、どんな反応が印象に残っていますか?
「この形、うちにもあります!」とか「この色の感じが落ち着く」といった声をいただきました。自分の中の記憶を描いたつもりが、見る人それぞれの記憶と重なる瞬間がある。その“共通の記憶”みたいなものを感じられたのが、とても嬉しかったです。あと今回の個展では、来場者の方が“葉っぱとお花のシール”を貼って完成させる体験型展示もあって。最終日どんなお花になるのか、私自身もすごく楽しみです。
葉っぱとお花のシールを貼って完成させる体験型展示
——最後に、個展を見に来る方・作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします!
“暮らしの中の一瞬”を切り取ったような作品ばかりなので、ぜひご自身の記憶と重ねながら見ていただけたら嬉しいです。きっとどこかに「見たことある」「感じたことある」という瞬間があると思います。気軽にふらっと、日常の続きを見に来るような気分で覗いてもらえたら嬉しいです。
——れのすかさん、本日はありがとうございました!
れのすか個展『MOMENTS IN LIFE』
れのすかさんの初個展、ついつい長居しちゃうような落ち着く温かい空間でした!
ぜひ、涼しくなったこの季節、やわらかで静かで温かいれのすかさんの日常に会いに行ってみてください🍳
📍 GALLERY IRO Room2
会期:2025.10.24 fri – 11.3 mon
時間:12:00-18:00 最終日17:00まで
住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-37-7
🎨 れのすか
https://lenoska.com
Instagram @lenoska_illust
Photo & Text/dōzo編集部