イラストレーター・ナカムラミサキさんの、あの頃の感性とともに、しなやかに進化するイラストの魅力
こんにちは。dōzoライターのPEです🐣
早いもので、もう11月。肌寒い日も増えてきましたね🧶
今月の壁紙を描いてくださったのは、イラストレーターのナカムラミサキさん。
秋のファッションをまとった二人が、秋のフェスで音楽に聴き入っているワンシーン。秋冬のお出かけが、ますます楽しみになるようなイラストです♩
今回は、壁紙制作のお話はもちろん、作風の原点や、イラストを描く上で大切にしていることなど、たっぷりとお話を伺いました!
ナカムラミサキ
1995年東京に生まれる。2017年に美術大学を卒業後、作家活動を開始。絵を描くときだけ両利き。頭が平な人間の絵が特徴。
Instagram @msknkmr3
秋の心地よさに誘われて、おでかけ欲が高まる一枚

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—— 今回の壁紙は「フェスやイベント」をテーマに描いていただきましたが、ナカムラさんご自身のフェスの思い出はありますか?
初めてフェスに行ったのは、12年ほど前の『SWEET LOVE SHOWER』で、それがすごく楽しかったんです。初めて知るバンドに出会えたり、来場者の年齢層も幅広くて、いろんな人がおしゃれをして音楽を楽しんでいる姿がいいなと思って。そこから何度かフェスに通うようになりました。
私自身もフェスに向けて下北沢の古着屋で服を買ったり、気持ちを高めながら準備するのも楽しみのひとつです。
秋のフェスは1、2回ほどしか行ったことがないんですけど、夏とは違って気候が気持ちよかったのを覚えています。秋のイベントで似顔絵を描く機会があったのですが、会場のひんやりした空気が心地いいんですよね。冬服も好きなので、夏とは違った開放感がある秋のイベントもいいなと思います。
—— 背景の水色からも、ひんやりした空気感が伝わってきました。
まさにおっしゃる通りで、だんだん冷たくなっていく秋の空気を描きたいなと。水色に少し青みがかったカーキのような色も馴染ませて、風を表現しました。

—— 二人の何とも言えない表情も印象的です。この二人は、どんな関係性やシーンをイメージされたのでしょうか?
一応カップルの設定なんですけど、私自身と重ねているところもあって。夏のフェスには行ったことがあるけど、秋のフェスはほぼ初めて、という設定です。オレンジの光や太陽、紅葉のような秋らしい空気に包まれて、「秋のフェスってこういう感じなんだな」っていうワクワク感やドキドキする気持ちを表現しました。
表情は、自分が真剣に音楽を聴いているときって、すごく真顔になっているなと思ったので。ニコニコしているより、ちゃんと聴き入っているような感じで描きました。
—— 確かに、夢中で音楽を聴いているときって、真顔になりますよね!キャラクターのファッションや全体的な色使いからも、秋らしさを感じます。
冬服らしさを出したかったので、カーディガンのモコモコ感は絶対に描きたいなと思っていました。普段から、自分ではあまり着ないけど憧れる服装や、街中で見かけてかわいいな、かっこいいなと思ったファッションを描くことが多いんです。
色使いは、秋らしさを出すために彩度の高い色をなるべく使わずに、オレンジも少し濁りのある、抑えめのトーンにしました。もともとシンプルな配色のイラストが好きなので、今回はオレンジやカーキ、ブラウン、背景のアイボリーなど、全部で6色ほどに絞っています。
—— 壁紙を使ってくださる方には、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?
秋にはたくさんのイベントがあるので、単純に外に出ていろんなことを楽しんでほしいなっていう気持ちです。写真を撮るときなんかに、ふと壁紙を見ていただいて、季節感も楽しんでもらえたらうれしいです。
小さい頃の自分へのリスペクトから生まれた表現
Instagramより(2025年)
—— ナカムラさんの特徴でもある平らな頭のキャラクターは、5歳の頃のご自身の絵が原点だそうですね。当時の絵を描き続けるようになった、きっかけを教えてください。
大学のゼミで、思い出のものを持ってきて、それをもとに絵を描くという課題があったんです。実家に5歳の頃のイラストのノートがあって、それを読み返したときに、今の自分が模写したら面白いんじゃないかなと思って。
成長した今の自分だったらどう描くのか。でも、大人っぽくなりすぎず、いかに5歳の頃の自分らしさを残せるのか。挑戦してみたくて描いたのがきっかけです。
そのイラストをゼミの先生がすごく気に入ってくださって、「描き続けたほうがいいよ」と背中を押してくれたこともあり、今でも描き続けています。
5歳の頃のイラスト
大学の課題で描いた「5歳の頃のイラストの研究」
—— 面白い!大人になった今のナカムラさんから見て、5歳の頃の自分の絵には、どんな魅力がありますか?
頭を丸じゃなくて平らに描くところとか。なんで平らなのか自分でも理解できないような突飛なところですね。手足のバランスも不規則だったり、足が曲がってたりするんですけど。
今の自分が絵を描くときの常識から外れた、何も考えずに描いていた当時の感性には、やっぱり勝てないなと思います。そういうぶっ飛び感は、ずっとリスペクトしています。
—— 今でも、当時の絵を振り返ることはありますか?
そうですね。当時のノートは今の自宅に持ってきていて、スキャンしたものや卒業制作の作品を時々見返しています。
ずっと絵を描いていると、普通になりすぎてしまう危険性をなんとなく感じていて。過去の作品を振り返って、面白さをチャージしながら自分を鼓舞するというか。「自分はこういうことをやってきたんだ」っていうのを振り返るようにしています。
—— 当時の感性が今でも刺激になっているんですね。他にも、影響を受けた作家や作品はありますか?
大学4年生ぐらいのときに、ジャン=ミシェル・バスキアの絵を見て、色使いやアバンギャルドな表現に衝撃を受けました。おこがましいですが、自分の5歳の頃の絵と少しリンクしているなとも思って。作家活動を始めた当初は、バスキアを意識していたこともあります。
Instagramより(2017年)
—— バスキアの影響を受けていた頃と、今の作風には少しギャップがあるように見えます。
大学1、2年の頃は、わりとゆるっとした優しいタッチのイラストを描いていたので、そこにどんどん戻っていった感じですね。バスキアの影響も取り入れつつ、以前の作風にも戻りながら、自分らしさが出せるようになりました。
—— どんなことがきっかけで、イラストレーターの活動を始めたのですか?
もともと、広告制作会社で働くことを目指して、美大で勉強していました。絵を描くことはずっと好きだったので、趣味でも続けられたらいいなと思って描き続けてはいたんです。
転機になったのは、5歳の頃の絵をもとにイラストを描き始めた頃ですね。デザイナーの友人が、私がSNSに載せていた作品を見てイラストの依頼をくれたんです。そこでお仕事をしたことが、活動を始めるきっかけになりました。
最近まで、銀行の本社でデザインに関わる仕事をしながら、イラストレーターとして活動していました。銀行でもフライヤーやノベルティをつくるなど、イラストを活かせる機会があって、スキルを磨く訓練にもなったと思います。
それぞれの視点で楽しめるイラストを
—— 活動を続ける中で、作風が変化したと感じることはありますか?
意識して何かを変えたことは、ほとんどないかもしれないです。ただ、「こういうものが好きだな」っていうのは時期ごとに変わったりします。
例えば、初めの頃は目をクリクリに描いていたんですけど、別の描き方が好きだなと気づいてから、どんどんシフトさせたり。5歳の頃の絵に忠実になりすぎて、耳を描いていない時期もあったんですが、描き続ける中で、やっぱり耳は描いた方がいいなと思うようになったりとか。
Instagramより(2017年)
—— 普段の日常生活からもインスピレーションを得ることはありますか?
街を歩いている人のファッションや配色からインスピレーションを得ることがありますね。住宅街を散歩したり、その街で暮らしている人たちを観察するのが好きなのもあって。ファッションのトレンドは、SNSでもチェックしたりします。
—— ナカムラさんの描く人物はすごくシンプルなのに、それぞれのキャラクターの個性を感じます。
帽子をかぶせたりとか、見た目の違いを描くのはもちろんですが、ざっくりと人物の設定を考えて描いています。
この人は陽気だから嬉しそうな顔をしてるとか、この人は暑がりだから冬でも半袖にしてみようとか。そういうストーリーを設定しないと、本当に全部一緒になっちゃうので、なるべく背景を考えてから描くようにはしていますね。
dōzo企画イベント「0円ギフト商店」で描いてくださったイラスト(2025年)
—— イラストを描く上で、変わらず大切にしていることはありますか?
突き詰めるというか、研究しながら描くことは、ずっと大事にしています。
途中で「やっぱりこうしよう」と思ったら、はじめに頭にあったものから大幅に変えたり、一番大切に描いていた部分をあえてなくしたりとか。そういうフレキシブルさは大事にしています。これは、大学の頃に培われた柔軟性が、今でも活きているのかもしれないです。
例えば、イラストを逆さにしたり、半分に切って片方だけ反対にしたり。そうすることで意外性が生まれて、また面白くなっていくことに気付きました。行き詰まったときこそ、「じゃあ、あえてこうしてみるか」っていう精神は常にありますね。
—— その柔軟さもナカムラさんの作品の魅力のひとつだと思います。作品を見る方には、どんなふうに楽しんでもらいたいですか?
イラストの表情などから、それぞれ自由に解釈して見てほしいですね。以前、個展で、自分では想像していなかったような感想をいただいたことがあって。人によって発想や見え方が全然違うんだなと気付かされて、それもすごく面白いなと思ったんです。
自分から「こう見てほしい」と発信するのではなく、それぞれの見方で感じてもらって、自由に楽しんでいただけたらうれしいです。
Instagramより(2025年)
大好きな音楽を、次なる表現へ
—— これまでのお仕事で、印象に残っていたり転機になったお仕事はありますか?
数年前に担当した、僧侶の稲田ズイキさんが書かれていた『こんにちはブッタ』という連載の挿絵です。楽曲を仏教的な視点で捉えるとどうなるのか、という内容の面白いコラムでした。
当時の私は、音楽を歌詞よりもリズムや音で楽しむことが多かったんですが、稲田さんのコラムを読んで、こんなに丁寧に歌詞を読み取れるんだって感動して。アーティストが伝えたいことと、稲田さんならではの解釈がすごく面白いなと思いました。
それからは歌詞に込められた思いも意識しながら音楽を聴くようになりました。イラストのお仕事を通して自分の価値観も変わったし、何かを読み込んで作品にする技術も養われた、すごく良い経験でした。

稲田ズイキさんのコラム「こんにちはブッダ」イラスト
星野源さんの『地獄でなぜ悪い』がテーマ
(ナカムラさんInstagramより)
—— 価値観まで変わるような、印象深いお仕事だったんですね。今後、挑戦してみたいことはありますか?
やっぱり、自分が音楽を好きになった原点でもある、音楽イベントのフライヤーやグッズのイラストを担当してみたいなと思います。
個人的にロックバンドが好きだったり、洋楽をよく聴いたりと、音楽は身近な存在なので、音楽に関わるお仕事にはもっと挑戦してみたいです。
—— 音楽とナカムラさんのイラストが掛け合わさった作品を見られるのが、今からすごく楽しみです!
ナカムラさんのギフトの思い出
—— 最後に、dōzoにちなんで最近のギフト事情を教えてください🎁
もらって一番印象的でうれしかったギフトは、大学時代の友人にもらった森永の「牛乳プリン」です。当時、好きすぎて毎日のように食べていたのを友人が知ってくれていて、誕生日に12個ぐらい入った箱でプレゼントしてくれたんです。
好きなものをいっぱい食べさせてあげようと思ってくれた、その気持ちもうれしくて。ギフトってやっぱり金額じゃなくて、気持ちだなと思いました。
逆に、自分が誰かにギフトを贈るときは、自分の好きなものをプレゼントすることが多いですね。アニメの『あたしンち』で、相手の好きなものじゃなくて、自分の好きなものをあげるといい、みたいな話がすごく印象に残っていて(笑)。
自分の好きなものを贈ることで、「あれ、美味しかったよ!」みたいなコミュニケーションが生まれるのも好きなので、意識的に自分の好きなものを選んだりします。
—— 好きなものを共有し合う時間も、特別なギフトになりますね! ナカムラさん、今回は素敵なお話をたくさんありがとうございました💫
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Text :PE
Edit:dōzo編集部
Photo:ナカムラミサキさんご提供