INTERVIEW
アロマの可能性を信じて《前田薬品工業》が始めた、ヘルジアンウッドでの村作り
1966年の創業以来、軟膏剤等の外用剤を中心に研究開発及び自社製造を手がけ、ジェネリック医薬品とOTC医薬品の研究開発してきた《前田薬品工業》。その技術と知見を生かし、“理想的な健康”のために生まれたのが、アロマブランド《Taroma》です。
《Taroma》は自然豊かな富山の大地に育ったお花や植物を抽出したアロマオイルをはじめ、抽出した精油や芳香蒸留水を用いた化粧品など様々な商品を展開しています。
今回dōzo編集部が伺ったのは、富山県立山町の「ヘルジアンウッド」内にある《Taroma》のフラッグシップ兼アロマ工房。前田薬品工業 執行役員の大久保 功一さんに、《Taroma》の設立のきっかけなどのお話をお伺いしてきました。
取材当日もラベンダーの精油を抽出していて、良い香りが漂う中、窓からは大自然が見える絶好の環境でインタビューをすることができました。
社長の実体験から生まれた《Taroma》
——本日はお話を聞かせていただきありがとうございます!こんな素敵な環境でお仕事できるなんて憧れます。
早速ですが《Taroma》の設立経緯を教えていただけますか?
10年ほど前、社長の前田に体調が優れない時期があり、その際に色々な病院に行っても原因がわからず、投薬を試しましたがあまり効果が無かったんです。
そんななか、ご友人に連れて行ってもらったサロンで、ハーブティーとアロマを提供してもらい、そのサロンに通っていくことで、体調が良くなってきたそうです。今までケミカルな薬に頼っていたのを、ナチュラル、自然由来の成分がこんなにも健康に効果があるんだってことに身をもって感じた体験になったようで。
そこから精油について調べてみると、国内で精油を生産しているところが少なく、ほとんどはヨーロッパ、オーストラリア、アジアからの輸入に頼っていて、日本では雑貨品として扱っていることが分かりました。特にフランスでは、調剤薬局やドラッグストアに精油が売られていて、民間療法や医薬品に近いような扱われ方をしているんです。
日本と世界の状況の違いや、自身の経験を踏まえて、「ちゃんと医薬品を作っている製薬会社がしっかりエビデンスをもって精油を作ることに意義があるだろう」というのがスタートで、アロマについての研究や品質管理を進めていくことになりました。
↑ 乾燥させたラベンダーの花と茎を、専用の櫛で仕分ける
そこからどんな素材が良いかを探している中、立山町の「吉峰」という地域で年一回のラベンダー祭りの為に、80才を超えたおばあちゃんが集まってラベンダーを育てていたんです。
でもそのラベンダーは祭りが終わると捨ててしまっているらしく、もったいない!とそのラベンダーを買い取らせていただいて、精油を抽出することにしました。
また、その精油を使った商品の売上の一部を生産者に還元するサイクルも確立していきました。
↑ 材料のラベンダーを大きな釜に入れ、朝採れの清水で丁寧に抽出していく
↑ 水蒸気蒸留法で精油を抽出する。上部の色が変わっている部分が精油になる
——きっかけは前田社長の実体験からだったんですね!自身の体調が回復していく経緯を体験されたのは大きいですよね。体調不良の原因って結果的に何だったんですか?
病院での検査でも原因はわからず、、ストレスだったのだと思います。
——だからそこケミカルでなく、ナチュラルなアロマの効果が適切だったんですね!
日本では雑貨として販売されている精油を、製薬会社がエビデンスを持って生産し、素材の富山のもので完結させるのはこだわりであり、強みでもありますよね。ラベンダー以外の素材にもこだわりがあるんですか?
主要な素材はヒノキと柚子になりますね。
ヒノキは、林業で出た間伐材をチップにしていただき、再利用しています。また、立山町は、山と町が近いので、作物の鳥獣被害が多いんです。
そこで畑と山の間に、木自体に棘のあるゆずを植えることで、天然の柵のようなものを作って被害を防いでいたんです。
そのゆずの木になった実をどうしよう?ってなった時に、実はジュースなどにして、不要となる果皮は我々にゆずっていただき、精油を抽出することにしました。
——きっかけは違えど、どちらもSDGsな取り組みでもあるんですね!
当時は、SDGsって言葉がまだまだ浸透していなかった頃ですね。笑
——先駆けだったんですね! そんな《Taroma》の今後の展望を教えてください。
香りの種類を増やしていきたいですよね!
あとは、容器も今はプラスチックなんですけど、自然に返るような素材で作りたいと思っているんです。
——やはり富山であったり、日本由来の素材にこだわっていくんでしょうか?
ですね、もしくはこのヘルジアンウッドで育てるのもありだと思っています。 今もラベンダーやローズマリーやレモングラス、よもぎなどを育てていて、《Taroma》や、ハーブティーにも使っているんです!
目指すのは、“理想的な健康”を実現する村
——たしかに、この工房から外を見るといろいろな植物が育てられているのが分かります!そんなヘルジアンウッドに関して教えてください。
ヘルジアンウッドは2020年3月にレストランをオープンしました。オープンしてすぐにコロナ禍に入り、お客様の足は遠のきました。しかし、止まっているわけにはいかない!という代表の前田の想いは強く、元々の計画通りに施設を開発していったんです。
7月にアロマ工房「The Workshop」、10月にはイベントスペース「The field」と広がっていきました。
↑ 最初にできた施設レストランのサイン
↑ ヘルジアンウッド内にある「The Field」。ここでいろんなイベントが開催される
——このイベントスペースは象徴的なデザインの建物で、隈研吾さんの設計なんですよね。
そんな素敵な場所で、地元の農産物を販売するマルシェや、ウェディングもやられていて。より開放感もあって、非日常的な体験ができそうです!そもそもどうやってこの場所を選ばれたんでしょうか?
「海が見える」、「立山連峰が見える」、「電線が少ない」。この3大要素を元に、200か所から選んだのがこの場所なんです。
—— 200か所!? 想定以上にこの場所の周辺環境のこだわりがあったんですね!それもあって本当に最高の環境だと思います。
もう一つは健康文脈で「オプティマルヘルス」っていう、日本語でいう「理想的な健康」を意識しているんです。
—— 「理想的な健康」?? あまり聞き馴染みのない言葉ですね。
「理想的な健康」の三大要素として「身体の健康」、「心・精神的な健康」、もう一つが「環境的な健康」であり、これは地域や社会から必要とされることなんです。
この三大要素を包括できている場所は少なく、病院では身体の環境や心の健康の治癒はできても、環境的な健康までは手が届かない。
それをヘルジアンウッドでは実現していきたいので、ヘルジアンウッドは「リゾート」ではなく「村」を作っていきたいと思っているんです。
古民家をリノベーションした宿泊施設とか、これから廃校になった小学校を利活用して教育にも取り組んでいきたいと思っています。地元の方と来訪者が気軽にコミュニケーションを取れる場所になることが理想ですね!
——まさに「村」ですね! 育てて、モノづくりして、食べて、泊まれて、学べる。ヘルジアンウッドがコミュニティを作っている感じがしますね。あと、サウナにも入れて!笑
↑ サウナのある宿泊施設「The Hive」もヘルジアンウッド内に併設されている
——アロマを作ることから、そこの周辺界隈、「理想的な健康」を保つために、「全部やってきますよ!」って思いを感じました。
今までは「治療」という観点から、「お薬」を作って「患者」になった人に対しての商品提供をしてきました。
これから健康を維持するために、「予防」だったり、治療が終わった後のアフターケアにも寄り添っていきたいと考えています。
——“〇〇になってから”という今までの考え方から、未然に防ぐ「予防」や、アフターケアまでを提供することで、ユーザーとの関わり方が増えているんですね。 ヘルジアンウッドのこれからの展望や目指す姿を聞けて、これからの活動がより楽しみになってきています!
《Taroma》のマッサージオイルを、サウナ後のアフターケアに
——今回dōzoでは、《Taroma》のマッサージオイルをサウナの周辺グッズを集めたテーマに掲載します。最後に一言いただけますか?
サウナはもうブームではなく、当たり前の文化に少しずつなってきていると思います。なので、直接的に関わるアイテム以外の需要もこれから出てくると思っています。
まさに今回のオイルもサウナ後のアフターケアに最適だと思っています。
自然豊かな環境で作られた富山の「モノづくり」を是非体感してみてください!